冷たい上司の温め方
「わかった。松木は二課か」
松木のデータをパソコンに表示すると、なかなかのいい男だ。
笹川、彼女を取られるなよ。と心の中でエールを送る。
「課長にフォロー体制をとるように伝えておく」
先の明るい社員なら、無理をさせるよりきちんと治療させた方がいい。
「ありがとうございます。
入院したらお見舞いに行くと、約束しちゃいました」
「は?」
しまった。
今のは完全にオトコとしての溜息だ。
笹川はそれに気が付いたようで、下を向いて笑いをかみ殺している。
まさか、取られるのは、笹川じゃなくて……俺か?
「あの……なにかいけないこと、しましたか?」
俺の不機嫌に気が付いた美帆乃は、不思議そうな顔。
そんなこと、無邪気に聞くな!
「いや。一課が手伝いが欲しいらしい。行ってこい」
「はい」
首を傾げながら一課に向かう美帆乃の後姿に、盛大な溜息が出そうになる。
「大変ですね、楠さんも」
「なにがだ?」
「いえいえ、なんでもありませんよ。
お見舞いには俺が行きましょうか?」
美帆乃と付き合いだしてから、笹川にからかわれてばかりだ。