冷たい上司の温め方
その夜。
モヤモヤした気持ちを抱える俺は、先に帰宅していた美帆乃に冷たい態度をとってしまった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
表情ひとつ変えず、靴を脱いでリビングに向かう。
いつもはこうして迎えてもらうのがうれしくてたまらないのに、今日はまともに顔すら見なかった。
「今日はハンバーグにしたんです。好きですよね?」
「あぁ、着替えてくる」
リビングには肉の焼ける香ばしい匂いと、カレーの匂いが漂っていた。
俺がハンバーグを好きなことを知っている美帆乃は、ソースを変えたり煮込んだりと、手を加えていつも作ってくれる。
着替えて出ていくと、テーブルの上には予想通りハンバーグカレーが並んでいる。
ハンバーグとカレーの組み合わせは最強だ。
だけど、「うまそうだな」の一言をどうしても言えないのは、今日の件が気になっているからだ。