冷たい上司の温め方
はぁ。
大人げないとわかっている。
だけど……お前は俺だけを見ていればいいんだよ!
これが独占欲というものか。
初めて知った感情に、自分で驚いていた。
ハンバーグカレーは、俺好みの辛さで、ハンバーグもジューシーに焼けていた。
なのに、なにも言わずに風呂に向かった俺は、最低だ。
チラチラと俺の顔を見ながら、なにかを考えていた美帆乃は、さぞかし不安だっただろう。
謝れ。
謝るべきだぞ、俺。
体を洗いながら悶々と考えていると、脱衣所のドアが開く音がした。
「楠、さん」
「どうした?」
なにかあったのか?
こんなこと初めてだ。
「私……なにかしちゃった?」
浴室のドア越しに聞こえる美帆乃の声が震えている。
「いや、なにも……」
焦った。
美帆乃はなにもしていない。
むしろ悪いのは俺だ。