冷たい上司の温め方
「でも、怒ってる、よね……」
違う。
怒ってなんかない。
ぴったりの言葉があるとすれば、嫉妬、してるだけだ。
泡のついた手で、慌ててドアを開けると、美帆乃は驚いて目を見開いた。
「あっ、あのっ……」
あぁっ、もう!
美帆乃の細い手首をつかんで一気に引き寄せ、目を丸くしている彼女を、そのまま浴室に引き込んだ。
「そんなに俺の裸、見たかった?」
「ち、違う……」
すぐにピンクに染まる頬は、彼女の魅力を一層ひきたてる。
「怒ってるよ。家ではなんと呼べと言った?」
「あっ……。ごめんなさい、大和、さん」
本当はそんなことはどうでもいい。
セックスの時しか下の名前を呼ばない彼女も、なかなかそそるから。