冷たい上司の温め方

「作ってくれたんですか?」

「あぁ。ハンバーグ、うまかったしな」


やっと言いたかった一言を、言えた。


「うれしい。すぐに着替えます」


パンを焼いただけで、大げさに喜ぶ美帆乃を見ていると、思わず頬が緩む。

バターを塗っただけなのに、「おいしい、おいしい」と何度も口にする彼女を見て、俺は持ち合わせていない素直さを、少しうらやましく思う。


幸せな気分のまま、慌ただしく出勤すると、笹川がすでに来ていた。

早速打ち合わせを始めると、時間差で美帆乃が入ってくる。


「おはようございます」

「麻田さん、おはよ。なんか、疲れた顔してる?」


笹川、余計なことを言うな。
ちょっと寝不足なだけだ。
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