冷たい上司の温め方
Faxなんてものが部屋にない私は、コンビニまで出かけて送信すると、帰り道でもうスマホが鳴った。
「はい。麻田です」
『騒がしいな、外か?』
「はい。貧乏なんでFaxなくて」
『お前なぁ。こんな時間に出歩くな』
「はぁー」っと盛大な溜息が耳に届く。
「そんなこと言ったって、Faxしろって言ったじゃないですか!」
またお説教だ。と思ったけれど、思いがけない言葉が返ってきた。
『仕方ない。家に着くまで電話を切るな』
「えっ? どうして?」
『なにかあればすぐにわかるだろ』
トゲトゲの嫌味が返ってくるかと思いきや、意外と優しいところがあるようだ。
『それで、この表以外は空いてるんだな?』
「はい、一応」
『お前、彼氏もいなさそうだしな』
出会った時から思ってたけど、どうも一言余計だ。