冷たい上司の温め方

Faxなんてものが部屋にない私は、コンビニまで出かけて送信すると、帰り道でもうスマホが鳴った。


「はい。麻田です」

『騒がしいな、外か?』

「はい。貧乏なんでFaxなくて」

『お前なぁ。こんな時間に出歩くな』


「はぁー」っと盛大な溜息が耳に届く。


「そんなこと言ったって、Faxしろって言ったじゃないですか!」


またお説教だ。と思ったけれど、思いがけない言葉が返ってきた。


『仕方ない。家に着くまで電話を切るな』

「えっ? どうして?」

『なにかあればすぐにわかるだろ』


トゲトゲの嫌味が返ってくるかと思いきや、意外と優しいところがあるようだ。


『それで、この表以外は空いてるんだな?』

「はい、一応」

『お前、彼氏もいなさそうだしな』


出会った時から思ってたけど、どうも一言余計だ。

< 55 / 457 >

この作品をシェア

pagetop