冷たい上司の温め方

『それじゃあ、八百八十円と交通費出してやる』

「ほんとですか?」

『その代わり、役に立たないときは減らす』


ムカつくけれど、それも正論かもしれない。

そもそもファーストフードの昇給はかなり働いてやっと二十円アップと提示されていた。
だから、最初から八百八十円というのは魅力だ。


「明日から来い」

『明日?』


明日というと、一、二限目にゼミがあるのみだ。


「わかりました。昼過ぎには。あっ、でも私……スーツが……」


就活の時に使っていた、あの破れてしまったスーツしか持っていない。
そして、今は買うお金もまともにない。


『心配するな。こちらで用意する。普通の恰好で来い』


用意してくれるの?


『それなりの格好はしてもらわないと困る』なんて言っていたくせに、制服があるならあるで、そう言ってくれればいいのに。


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