冷たい上司の温め方
「ここは、大切なお客様がいらっしゃるから、特に念入りに。
会社の顔みたいなところなの」
「はい」
「このフロアを任せられているというのは、私にとっては誇りなのよ」
遠藤さんの掃除に対する真剣さとプライドが垣間見える。
エレベーターホールの大きな花瓶に生けられた花は、高そうな花だらけだ。
もちろん相当な額がかかっているのだろう。
この花瓶だってかなり高そうだ。
遠藤さんは一番奥に行くと、モップをかけ始めた。
私はエレベーターホールからだ。
だけど、玄関とは違って、元々ほこりもあまりない。
しばらく作業をしていると、エレベーターからふたり降りてきた。
おそらくお客様と重役の秘書だ。
前を歩くやけに態度の大きいおじさんは、どこかの会社の偉いさんのようだ。