冷たい上司の温め方

「麻田さん、社会ってこんなもんなの。
役職がつけば、こんなこともまかり通る。
逆に私があの人にモップを引っかけたら大問題。
だけど、そんなの人として素晴らしいとは言えないでしょ? 反面教師にすればいいの」


遠藤さんの言葉が、胸にスーッと入ってくる。


「麻田さんがいつかキャリアを積んだ時、今日のことを覚えておきなさい。
そうすればきっと成功できるわ」


鼻息を荒くしている私とは対照的に、遠藤さんは当の本人だというのに冷静だ。

年の功ってやつなのか、遠藤さんができた人なのか。


「私ね、実は昔はあんなだったのよ」

「えっ……」

「結構有名な会社で、一応重役やってた」

「重役?」


それならどうして、ここに?


「さて、次のフロア。次は楠君のいるところね」

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