冷たい上司の温め方
遠藤さんは話の途中で切り上げてしまう。
聞きたくて仕方がなかったけれど、慌てて私もあとに続いた。
人事のあるフロアは、重役フロアのひとつ下で、経理や電算室の隣だった。
まずは廊下にモップをかけ始める。
もうすぐここで働くのだと思うと、ここでこうして掃除をしているのが不思議だ。
重役のフロアとは違い、慌ただしくスーツ姿の人が行き交う。
このフロアは、基本的に皆私服のようだ。
女性も制服を着ていない。
「制服のない会社って珍しくないですか?」
「あぁ、楠君が変えたのよ。
元々一般職の女性だけあったんだけど、女性だって同じ仕事をしているわけだから、区別するのはおかしいって。
でも逆に、制服組だから責任を逃れられると考えるのも許さないってね」
なるほど。
その意見には説得力がある。