冷たい上司の温め方
エレベーターホールからモップがけを始めると、エレベーターから人が出てくる度にゴミが散らかる。
それでも、仕方ないともう一度集め、できるだけ早く塵取りで取る。
意外と技術が必要だ。
業務中のオフィスの掃除は、結構難しいらしい。
「あっ……」
またエレベーターが到着する。
集めたゴミだけでも取ってしまおうと慌ててしゃがんだけど、間に合わない。
足元の小さなほこりなんて、誰も気にすることなく歩いていってしまう。
諦めモードに達すると、エレベーターから出てきた人が集めたゴミを避けていった。
あれ?
ふと顔をあげると、ゴミの前に楠さんが立っている。
「早く取れ」
「あっ、はい」
彼がそこにいてくれるお陰で、皆が避けていくのだ。