冷たい上司の温め方
「社会的地位なんて関係ない。悪いものは悪いし、良いものは良い。
子供にはそう教えるくせに、自分はできなくなってくるのよね」
確かにそうだ。
子供の頃は悪かったと思えば下級生にだって謝ったし、悪くないと思えば上級生ににらまれようと謝ったりしなかった。
「麻田さん、私に『掃除をやらされるのだと知って、本当は怒ってました』って謝ってくれたじゃない。
その素直さは、大人はなかなか持ち合わせていないのよ」
そう、なのかな……。
「楠君、正義が勝つと信じたいのよ。
実際は叶わないことの方が多いんだけどね」
正義は勝つ……か。
それじゃあ、あの変身する正義のヒーローと一緒だわ。
そんな突っ込みを心の中で入れたけれど、なんだかイヤな気はしなかった。
私だって、正義は勝つと信じたい。