冷たい上司の温め方

リストラ!?


その日は遠藤さんに色々なことを教えてもらって、就業時間が終了した。

掃除の仕方はもちろんのこと、人としての心構えなようなものも学んだ気がする。



遠藤さんは「結局は自己満足よ」と笑いながら、誰も気が付かないような箇所まで掃除を怠らなかった。

適当に済ませればいいのにと思わなくもなかったけれど、「私達は掃除のプロだから」と微笑んだ彼女に、プライドを持って仕事をすることの大切さを教えられた気がした。


楠さんに『雑用係』だとか『シモベ』だなんて言われたけど、他の人から見れば“雑用”だとしてもきっと大切な仕事があるはずだ。

だから彼は私を雇ってくれたのだろうし。


その日は、たった数時間だったけれど、ファーストフードで訳もわからず注文を叫んでいたときよりずっと充実していた。


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