冷たい上司の温め方
そうなんだけど……。
楠さんが私を遠藤さんのところに連れて行ったことには、もしかしたら大きな意味があるのかもしれないと思えたから、納得している。
「それより、久美はどうよ」
「それがさ、すごく小さい会社に引っ掛かったのよ」
久美の報告に心が躍る。
「よかったじゃん!」
「うん。とりあえずホッとしてる」
まだ就職の決まらない人はゼミにもいる。
いわゆる“手に職”がない私達は、あまり重宝されない。
それに、どれだけ勉強を頑張ってきましたとアピールしても、「ふーん。そんな人いくらでもいるよ」くらいにしか思ってもらえないところも多い。
だから、内定をゲットできたのは大きい。
「美帆乃は、いいよね」
「なんで?」
「だって、やっぱ一流企業だもん」