冷たい上司の温め方
十三階についても遠藤さんの姿はない。
仕事の早い彼女は、次から次へと場所を変えていくのだ。
十二階に降りてみると、掃除道具を入れたカートがトイレの前に置かれている。
見つけた。遠藤さんだ。
「こんにちは」
私が意気揚々とトイレに入ろうとすると、丁度出てきた遠藤さんは「しーっ」と鼻の前に指を立てる。
「……はい」
小声で返事をした私に小さくうなずいた遠藤さんは、トイレットペーパーを私に手渡すと、手招きして再び入っていく。
すると、鏡の前にふたりの女子社員が化粧直しをしながら話していた。
「麻田さん、そっちお願い」
「はい」
遠藤さんに言われた通りトイレットペーパーの補充をしていると、さっきの女子社員の会話が聞こえてきた。