冷たい上司の温め方
「ホントに? あの女、ちょっと部長のお気に入りだからって調子に乗ってるわ。
デキてるんじゃないの、あのハゲオヤジと。ま、お似合いね。
そんなことより、あの人とどう?」
「うん、付き合うことになりそうよ」
クスクス笑うふたりは、すぐにトイレから出ていった。
私達に聞こえていることはわかっていると思うんだけど、こんなに堂々と悪口言うなんて、驚きの一言だ。
「驚いた?」
奥のトイレの個室で立ち尽くしていた私に、遠藤さんが溜息混じりの声をかける。
「は、はい」
「私達清掃社員は、所詮彼女達と同じレベルの人間ではないの。石と同じ。
だから平気であんなことも言っちゃうわけ」
そんな……。
でも確かに、同じ部署の人がいたら、決して口にしないような悪口だった。