冷たい上司の温め方
「あぁ、でも気にしない。
最初は驚いたけど、もう慣れたから。
それに……こうやっていろんなことを知れるしね」
遠藤さんは、にこやかな顔で今度は洗面台を拭き始める。
「でもね、あなたはこれからこういうところで働かなきゃならないの。
まぁ、楠君のところはもうひとり男の子がいるだけだから、こんなことはないかもしれないけど……」
「もうひとりだけなんですか?」
「うん。三課は特殊な課だから。そのうち楠さんが説明してくれるわよ」
『特殊な課』というところに引っ掛かりはしたけれど、今はあのふたりのことで頭が一杯だ。
「あの……さっきの……」
「あのふたりは総務部のやる気がないコンビ。
あんな風に言ってるけど、いつもミスして叱られてるわ」
「そうなんですか?」