冷たい上司の温め方

それに、『強靭な精神力』なるものを持っている気もしない。

『その人の人生を左右する』って……とんでもないところに足を踏み入れちゃったのかも。


「さて、次のフロア行きましょう」


遠藤さんはさっさとモップを片付けると、トイレを出て行った。



それから毎日、遠藤さんと一緒に掃除の仕事をして、学ぶことがたくさんあった。


相変わらず、“石”と同じような扱いを受ける私達は、会社内の情報がわんさか集まってきた。

誰が仕事をしくじったとか、上司に絞られたとか……。
そんなことは序の口で、通信販売部の部長がセクハラまがいのことをしていることまで耳に入った。


人事部のあるフロアは、十八階。

その廊下を掃除していると、楠さんが出てきた。
相変わらずスーツが似合っている。


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