冷たい上司の温め方
「あなたのことはまだ伏せたいんでしょうね。
こうして掃除をすることもできなくなるわ」
それはそうかもしれないけれど。
「遠藤さん、楠さんとなにを話していたんですか?」
どうしても気になった私は、遠藤さんに尋ねた。
「あぁ、通信販売部のこと。
ずっと休んでいる女子社員がいて、楠君気にしてたの。
で、なにか知らないかって聞かれて……」
「あっ!」
「しーっ」
思わず大きな声が出た私を、遠藤さんは制した。
あのセクハラがどうとかっていうやつだ。
「彼等、調査に行ったのよ」
そうだったのか……。
それにしても、社員の出勤をチェックしてなにかを嗅ぎつけるなんて、相当な嗅覚の持ち主だ。
「あとは彼等の仕事。ちょっと中、入ってみる?」
「はい」
遠藤さんは人事部のドアを開けた。