冷たい上司の温め方
授業の関係であまり時間の取れなかった私は、こうして部内にまで入ることはまれだった。
ほとんどが遠藤さんが担当して、私は廊下だったから。
初めて入った人事部は、私の想像とは違っていた。
想像以上の大所帯。
それに、リストラと聞いていたから、殺伐とした雰囲気を予想していたのだけど、穏やかな笑い声が広がっていたのだ。
だけど、“石”である私達は、誰からも話しかけられることはなかった。
「楠、動き始めましたね」
「そうだな。次はどこだろう。
まぁ、あいつに任せておけば大丈夫だ」
ひときわ大きなデスクで仕事をしているのは、多分部長だろう。
部下とにこやかに話している。
「そうですね。楠に係わると、俺達も厄介ごとに引き込まれる」