冷たい上司の温め方
面倒なことは楠さんに、ってことなのか。
なんだか気の毒に思ったけど、あの口の悪い楠さんが、文句も言わずに働いているのに驚いた。
人事のごみ箱を回収して、フロアを掃くと、私達は廊下に出た。
「私……あそこで働くんですね」
「そうね。頑張りなさいよ!」
「はい」
なんだか複雑だった。
大きな会社に就職できると大喜びした。
でもリストラ担当と知って驚き、面倒なことを押し付けられていることまで知って……素直に喜んでいいのかわからなくなった。
いや、でも、ここの就職を逃したら、田舎に帰らなければならない。
私は気合を入れ直した。