冷たい上司の温め方
第3章
そんな話は聞いてません
卒論は、無事に終わった。
ダイオー電機の仕事の合間に時間を惜しんで書き上げた卒論は、自分でも驚くほど良い出来で、めったに褒めてはくれない教授に「よくできている」と言われたほどだ。
あんなに忙しかったのに、どうやら時間がないことで、かえって集中力が増したらしい。
遠藤さんの下での掃除は、どんどん楽しくなった。
最初はあんなに嫌だったのに、自分の手でフロアがピカピカになるのがうれしくてたまらない。
その一方で、相変わらず社内の色々な噂は耳に入って来て、うんざりもした。
人間の嫌な面ばかり目にしていると、気が滅入る。
だけど、噂は噂。
楠さんと笹川さんが裏付けに走ったように、それを鵜呑みにするのは危険だとも知った。