冷たい上司の温め方
あの時のセクハラ騒動は、どうも真実だったらしく、通信販売部の課長は、解雇になったようだ。
だけど、セクハラされていた女子社員を切って口封じするのではなく、きちんと悪い方に制裁を加えてくれたことにホッとした。
権力の下では、一介の女子社員なんて、吹いたら飛んでしまいそうだもの。
『正義が勝つと信じたいのよ』なんて遠藤さんが言っていたけど、『捨てるものと拾うものを間違えてはならない』と言っていた楠さんは、本当に正義のヒーローみたいな人なのかもしれないと思い始めていた。
そして、無事に大学を卒業すると、入社式の三日前から人事部に研修で入ることになった。
バイトの最終日に遠藤さんに挨拶に行くと、「よく頑張ったわね」と褒めてくれた彼女は、心なしか目が潤んでいた。
まるで、ここも卒業するかのようだ。