もしも透き通れば
君の心が
あの朝、彼女は言ったんだった。
結婚した時が最高潮の時だったなら、あとはもう落ちていくしかないのかしら。
前の席に座って呟いた妻の言葉に、俺は皿から顔を上げた。
「・・・何、いきなり」
俺は聞く。
いつもの朝食風景。目の前に並んだ、彼女の作ってくれたご飯。妻の実家が朝食はパン派だったので、我が家でもそれは受け継がれた。トースト、サラダ、卵料理とコーヒー。
「恋愛結婚の場合ってね」
妻が言う。さっきトーストを口に入ればかりだったのでもぐもぐしながら。
「好きから始まって、目出度く付き合うことになって、それから紆余曲折を経て結婚にいたるでしょう?プロポーズの時が、多分、お互いに最高潮だと思うのよ。ドキドキの」
片手で曲線を空中に描きながら話す。
まだ化粧のしていない彼女の素肌はつやつやしていて、眉毛が少なくて短く、3歳は若く見える。朝の光の中で、それが我が家の日常景色だった。
「それで?」
俺はコーヒーを飲みながら、こっそりと壁の時計を気にする。後10分で家を出なければ。
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