もしも透き通れば


 妻の居ない家に帰って、会話がないからテレビをつける。そして寝て、たまに寒さで目を覚ます。あの温かい体を探す。でも隣には、冷たいシーツが広がるだけ。

 もっとたくさん、抱けば良かった。思い出す記憶さえ悲しく薄れて遠ざかりつつある。

 大きなベッドで、夜の中、一人で途方に暮れる。

 朝はトーストだけを焼いて、台所で突っ立って食べる。パンに塗るものが何もなくて、冷蔵庫をバタンと閉めた。


 また仕事にいく。ひたすら仕事を片付けて、出来るだけ家に帰る時間を遅らせていた。

 そうやって過ごしていた。離婚をしてから2年間、何とかただ、息をしていた。

 原因がわからない別れって、こんなに辛いのか、と思った。

 だけど、寂しがり屋の彼女に別れを選ばせたのは間違いなく俺なんだろう。一緒にいるだけではダメだったんだろう。

 性格の不一致、と言っていた。二人とも働いていたし、財産も平等にわけて修羅場なく終わった。

 心の傷と何でもない日への憧れだけが、ゆっくりといつまでも続いていた。



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