イルリマ帝国伝説記
本を戻して再び背表紙を見ていく。ナルニア王国シリーズの続きを探す。沢山の本がオレに自分を手にして欲しいと告げる。そんな誘惑を今は振り払い目的の本を探した。
棚に並ぶ異国の物語の原本。シックなデザインがオレの好みだ
異国情緒が溢れるとはこんなことを言うのかもしれない。
目的の本はすぐに見つかった。オレはそれを手にするために手を伸ばした瞬間。それはまるで割り込むかのようにして手中に収まった。いや入ってきたそういうほうが相応しいだろう。
(ったく、お前じゃねえっての)
本から手を離そうと引っ込めようとする。しかしそこから手を離すことはできない。
(なんなんだよ、一体)
力任せに離そうとするけれど離れない。本に手が生えて捕まれているそんな感覚。
「ったく。オレが何をしたってんだよ」
思い当たる節ならひとつ。学校をサボったこと。その仕打ちだとでもいうのか?
冗談じゃない
警察や学校、司書員に見つかるならまだしもなんで本に
苛立ちに支配され冷静さがなくなる。取敢ずこれを何とかしなきゃ
だけどどうやって?
思考を巡らせる。司書員に頼むか?いやそれは不味い。今のオレのこの格好じゃ。
色々試してみる。その一つが腕を振るというもの。周りに人がいないのを確認すると力任せに振ってみる。
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