イルリマ帝国伝説記
何度も何度も腕を振る。しかし本か離れることはない。
しばらくしてオレは自分の手を見る。
掴んでいる手を離せばいいというとこにやっと気づいた。
我ながら可笑しさに吹き出しそうになり堪える。
もう一度本を棚に戻す。そして手を
(離れない)
マジかよ。
離そうと手を引いた。だけれどそれは離れないで手にくつっいたままだ。
このままじゃいけない。図書館の本を無断で持ち出して騒ぎを起こしたくなんてない。まして学校をサボっているというのに。もて余している手を本と掴んでいる手の間に突っ込んで離そうとした。だけれど離れない。
(いっそ腕を)
こんな考えが頭を過り、首を左右に振る。恐らく切り離された腕と一緒に病院に行って繋がれるのがおちだろう。その時まだ本が離れていなかったら。
辺りを見渡す。平日の図書館と言うこともあり人は疎らだ。
離れないなら諦めるしかない。オレはもう一度本をしっかりと掴み所定の場所に移動した。
制服の汚れなど気にせずオレは床に座った。くっついたままの本を膝の上に乗せる。誰かの目に留まることなんて無かったんだろう。
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