君は空、僕は風
<Overtureは突然に>

私と「彼」、筑紫雅治(ツクシマサハル)は学番の近い仲良しに入ると思う。
先生が名簿順で振り分けるグループではよく一緒になるけど、本命の仲良しとはちょっと違うし、でも別にお互い嫌いなわけじゃないから何かあったらおしゃべりなんかはする。
平たく言ってしまえば普通のクラスメイトにちょっと毛が生えた程度の仲良しだ。
そもそもお互いに入学してきた段階で付き合っている相手がいたから異性として意識したこともなくて、お互いにバカ話とかしてて、そんな変わりない毎日が楽しかったわけで。

「ねーハルー」
私は彼をハルと呼ぶ。
「何、いこちゃん」
彼は私をいこと呼ぶ。

「今度あの人が誕生日なんだけど、ハルくんなら何がほしいー?」
「んーなんだろうなー」

そんな他愛もない会話をしたり。

「いこちゃん」
少し高くて、甘ったるい声が私の名前を呼ぶたび、頭の奥がしびれる。
ただそれは恋なんかじゃない。
淡い憧憬。
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