君は空、僕は風

(いーこーちーゃーんー)

窓越しの口が大きく動く。

(なーあーにー)

笑いながら私も大きく口を動かして「返事」をする。

(かーえーろー)

自分のスマホに目を落とす。
連絡がくるべき相手からは音沙汰なし。
次いで図書室をぐるっと見る。
「リクエスト本、届きました!」のポップが気になったけど、それは明日でもいい気がした。

だから。

(いーいーよー。まってて!)

そう言ってかばんをひったくり
私は駆け出す。
そんな毎日がたまらなく好きだった。

そこそこの幸せを
そこそこに楽しんでいる
そこそこの人生。
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