好きトモ!
友達の彼

 ――春休み。

 桜の花が舞い降りる、ピンク色の街道を通っていく。

「もったいないな」

 高校の入学式が終わったころには、この桜はもう、散ってしまっているんだろう。

 それが惜しくて、私は、ぼんやりと桜の花を見ていた。

「桜、綺麗なのにね」

 少し寂しい顔をしていたのかもしれない。
 だって、この春休みは、友達とも遊べなかったし、失恋もしていたから。

 だから、私は、恋に臆病になってしまったのかもしれない。

 それは、中学のある日のこと。

「泉井 一輝(わくい いっき)」

 それが、私の好きな彼の名前だった。

 背は、中学の三年間ですごく高くなって、180cmはある。

 切りつめたスポーツ刈りの黒髪は、清潔感があって、サラサラだ。
 唇は引き締まって、何も話さなければ、頑固そうにも見える。

 でも本当は、やさしくて、いつも明るくて、口にする言葉は、いつも誠実。

 だからかもしれない。
 彼が初恋だったのは――…。
< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop