好きトモ!
友達の彼
――春休み。
桜の花が舞い降りる、ピンク色の街道を通っていく。
「もったいないな」
高校の入学式が終わったころには、この桜はもう、散ってしまっているんだろう。
それが惜しくて、私は、ぼんやりと桜の花を見ていた。
「桜、綺麗なのにね」
少し寂しい顔をしていたのかもしれない。
だって、この春休みは、友達とも遊べなかったし、失恋もしていたから。
だから、私は、恋に臆病になってしまったのかもしれない。
それは、中学のある日のこと。
「泉井 一輝(わくい いっき)」
それが、私の好きな彼の名前だった。
背は、中学の三年間ですごく高くなって、180cmはある。
切りつめたスポーツ刈りの黒髪は、清潔感があって、サラサラだ。
唇は引き締まって、何も話さなければ、頑固そうにも見える。
でも本当は、やさしくて、いつも明るくて、口にする言葉は、いつも誠実。
だからかもしれない。
彼が初恋だったのは――…。