有名店の店員さん
美衣がそんなこと考えてるとは知らず、唯葉は店員とまだ話していた
幸か不幸か今は平日の昼間ということもありほぼ客がいないからだ
「ねぇ、店員さん…」
くるり振り返る店員の女にしては短く男にしては長い黒髪が舞う
「なに?」
店員は美人だ
鼻が高く、海色の目にどこか暗い面影のある顔立ち
ハーフなのだろうか?
「名前。私知らないんだけど…」
すると、一瞬店員の顔が冷たい氷のような表情になった
最初の笑顔も仮面のように見えていたが、この表情は本当の表情に見えた
「……名前はないよ」
やっぱりね
私と彼は似ている
別に心が見える訳でも無いけど
わかるんだ
「じゃあさ、私がつけてあげる」
あ、ちょっとだけ笑ってくれた
「えーとね、光に葉っぱの葉でコウハ。私とお揃い!」
「…光葉か。私には合わないな」
「そんなことないよ」
私は初めて彼に微笑んだ
「私が保証する」
…ピッタリだよ
だって、光葉は私を家族という悪魔から救ってくれたのだから…