ハンナの足跡

出会い

　僕は幼い頃からずっと一人だった。
　世間の人が感じたことのない孤独を僕は知っている。両親を早くに亡くし、よくある話、親戚に引き取られ、たくさんの面倒な争いごとを乗り越えて、なんとか社会人になるまで成長できた。僕がここまで生き延びて来れたのは、周囲の人間たちに対する敵対心があったからだと思っている。僕はニコニコ従う顔をして、そんな幼い僕を心の底では厄介者、邪魔者、そう思っている人が何人もいることを知っていた。僕が生きていることは、それだけで周りの人間にとっては迷惑で、出来れば自殺してくれないかなんて思っている人が居ることも知っていた。だからこそ僕は生き延びて、生き抜いて、たくさん迷惑をかけてやった。でも、今はこうして、一人前の社会人として、誰の前に出ても恥ずかしくないような人間に育ったつもりだ。
　「誰一人、信用できる人間など居ない」
それが僕の信念であり、僕の生きるエネルギーだった。ハンナ、君に出会うまでは…。