ハンナの足跡
朋子とは、店の前で別れ、僕は一人でアパートまでの道を歩いた。そのまま帰る気がしなかった。じっとしていられなくなって、僕は電車に乗り込んでいた。そして、若い連中が、当てもなく彷徨い歩く街の駅で降りた。日が暮れる少し前だったので、街は混雑していた。肌を露出した娘に声を掛ける男達。僕はそこへ意識を集中していた。社長を探そうとしていたのかもしれない。社長になど、一度も会ったことがなく、外見上の特徴もしらないのに。ただじっとしていることが出来なかった。