ハンナの足跡
「へえ、あんたハンナの友達って訳か。部屋へ突然訪れたなんて、ハンナのやつ、まだ悪い癖が治らねえんだな。あいつ、よく逃亡してさ。どうせ戻って来るんだけど。ハンナの居場所は、ここしかねえんだよ。可哀相な子さ…。」
 僕は社長をじっと見た。
「ハンナを可哀相だと思うなら、辞めさせてやってください。」
 社長は深く溜息をついた。
「辞められるんなら、とっくに辞めてるよ。第一、逃亡したって、俺達は探しに行ったりしたことなんて、一度もないんだよ。ちゃあんと自分で戻って来るんだから。」
「それは、マネージャーからも聞きました。」
「なんだ、あいつとも話したの。へえ、熱心だねえ。そこまで熱くなれるなんて、羨ましいなあ、俺は。」
 僕は冷静さを失っていた自分に気が付いて、恥ずかしくなった。
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