ハンナの足跡
「お兄さん、先走り過ぎたなあ。なあ、そう思わねえか、自分で。こういう仕事してる女で、覚悟が出来てる女でも、好きな男が出来たら、きれいなまんまの自分に戻りたいなんて、言いたくなるもんだよ。ハンナだって、本気で言ってたわけじゃないんだろ?」
 僕は押し黙ってしまった。
「図星だな。あんたにそういうこと言えるって事は、心を許してんだな、ハンナは。もう一度、よくハンナと話をしてみなよ。その上で、本気でハンナが辞めたいっていうことなら、俺も真剣に考えてやっから。今の段階では、早過ぎるな。」
「…はい。」
「まあね、その行動力は買えるよ。だからそんな、落ち込むな。」
「はい。ありがとうございました。もう一度、話をしてみます。」
「おう。」
 僕は席を立って、ドアの方へ向かった。すると、社長が声を掛けて来た。
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