ハンナの足跡
 そんな話を聞いてしまった以上、普段からかわれている分、今度は僕が神崎をからかってやりたい気持ちになって、次の日、顔を合わせたらまず一番にからかってやることに決めた。
 朝、出勤すると、いつも僕より少し前に来ていた神崎がそこに居た。僕は元気良く挨拶をした。紺野さんが来たところで、朝礼が始まった。朝礼を終えて、フラフラしながら外へ出た神崎を僕は追った。自転車に乗り込むついでに、神崎に声を掛けた。
「神崎先輩、なんか疲れてません?」
 神埼はビクッとして、僕の方を振り返った。
「ああ、お前か。いや、ちょっとね。」
 僕は間を空けずに言った。
「女の子三人も一度に相手にしたら、そりゃ疲れますって、先輩。」
「なんだ、お前、なんで知ってんだよ!?」
「僕と彼女達の仲を甘く見ちゃいけませんよ。三人とも、また遊びに来てくださいって言ってましたよ。沢山サービスしますからって。」
「ははっ、そっか。そりゃあ、有難いなあ。」
 神崎は僕に先手を取られたことが悔しかったのか、それとも、もう三人相手にするなんて無理だと思ったのか、苦笑いをしながらそう言った。
 
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