ハンナの足跡
呆然と外を眺め、ひたすらコーヒーを飲みまくっていた僕の胃は、悲鳴を上げていた。今度は水を飲み始めた。口さびしい気がしたので、ケーキを食べることにした。なんだか無性に、ショートケーキが食べたくなって、注文した。男一人、ショートケーキを食べながら、何をするともなく、外をじっと眺めている。感傷的な印象を与えるだろうと僕は密かに思いながら、ケーキを待っていると、ウエイターがやって来た。仕事慣れした感じのする男だった。親しみ易いとも、事務的とも言えない、ウエイターとして最低限のマナーをひたすらにこなしている態度に、僕は好感を持った。目立ち過ぎず、かといって、気が利かないわけでもない。バランスの取れた応対の出来る男だった。僕もこういう男になりたいと思ってしまった。