ハンナの足跡

「…佳奈って、まさか社長…」
　僕はもう一度、社長が見せてくれた戸籍を見た。佳奈という名がそこにある。
「社長、ハンナを養女として…」
「そうだ。俺の籍に入れた。初めはそのつもりはなかったんだけどな。…娘が死んだばっかりで、寂しくってよ、旅に出たんだよ。そしたら、旅行先で可愛い子見つけてな。それがハンナだったんだよ。ハンナの家庭の事情知って、俺が面倒見るからって両親に掛け合ったら、一発でＯＫが出た。そんときは、もちろん俺の店で働いてもらって、金を毎月仕送りするって約束でな。しばらく働かせてみて、いい子だなって思ってよ。別に籍いじくったりなんてする必要もなかったんだけど、養女にしたのよ。」