ハンナの足跡
 二人が旅行へ出かけてしまうと、僕は急にほっとした。大きな役目を終えたように。ハンナの妊娠が分かって以来、引っ張りダコだったせいか。
 僕は真っ先に、朋子に会いに行った。温かい朋子の腕の中で、僕はいつまでも甘えた。朋子の前では子供のようになれた。朋子の前でだけ、無防備で居られた。僕はもう、朋子が居なければ生きていけないと思った。
 
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