ハンナの足跡
 ハンナは僕の手を、自分のお腹の上にそっと置いた。
「うわあ、不思議だね、女の人の体ってさ。なんか風船が膨らんでるみたいだよな。針で突いたら割れちゃいそうだぞ。」
「やめてよ、お兄ちゃん。変な事言わないで。」
「ごめんごめん。ちょっとふざけただけだよ。本気でそんなことするわけないだろ?この俺が。」
「ふふっ、そうだね、お兄ちゃん優しいもん。」
「あっ、蹴った?今。」
「うん。ちょっと。」
「おお、すごいなあ。感動だよ、お兄さんは。」
 僕はハンナのお腹の子と、交信できたような気持ちだった。
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