ハンナの足跡
 ハンナの手を握る。真っ白で、プラスチックのようだった。強く握ると、壊れてしまいそうで、そっと包むようにして握った。
「ハンナ、俺だよ。ハンナ。」
 僕は声を掛けたが、反応は無い。西島が、瑠奈を連れてハンナに近寄った。
「ハンナ、瑠奈だよ。瑠奈来てくれたんだ。先輩が連れて来てくれたんだよ。目を覚ましてくれ、ハンナ。ハンナ。」
 西島は必死の思いで呼びかけていた。瑠奈は目を覚ました。
「瑠奈が目を覚ましたよ。ほら、瑠奈、お母さんだよ。」
 まだ首の座らない瑠奈を支えて、西島は瑠奈にハンナを見せてやろうとした。瑠奈は泣き出すわけでもなく、目を丸くして、自分の母親の姿をその目に映していた。
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