ハンナの足跡
「ご親族の方、申し訳ありませんが、そろそろ…」
 僕はまだ手を握っていた。西島が見かねて、僕に声を掛けた。
「先輩、行きましょう。」
 西島の声が震えていた。僕はイライラした。
「何いってるんだ。この手はまた温かくなるんだ。ハンナが死ぬわけないだろ。」
「先輩…。」
 西島はさらに嗚咽が酷くなった。
「あんた、もうよしなよ、見っともない…、ハンナを安心して、逝かせてやんなよ、」
 朋子が優しく僕の肩を抱いた。
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