ハンナの足跡
朋子が居てくれたおかげで、僕は数日で、仕事に戻る気になれた。仕事へ出ると、僕はハンナのことを忘れようと、普段より精を出して働いた。紺野さんも田辺も、そんな僕を気遣ってくれた。二人の優しさが、温かくて、痛かった。通りたくはなかったが、瑠奈がお腹に居るときのハンナに偶然出会った道を通らざるを得ないことがあった。僕は、その日の思い出で頭が一杯になってしまい、途中、公園で泣けるだけ涙を流した。気分が悪くなり、吐いた。冷や汗が出た。公園の水道で顔を洗って、仕事に戻った。僕は自分と戦っていた。