ハンナの足跡
 僕が勤務している派出所には、紺野さんの他にもう一人先輩が居る。僕の2つ上の先輩だ。名を神崎という。こいつは先輩という名には相応しからぬ人物だ。僕が紺野さんに可愛がられているのも面白くないようだ。僕は素知らぬ顔をしているが、男のくせに女みたいに気持ちの悪い意地悪をしてみせることがある。本当に気持ちの悪い男だ。
 最近、僕が調子良く生活をしていることが目に付くらしく、神崎はふてくされている。得意の意地悪も頻繁に出なくなってしまい、大人しくなってしまって、益々気持ち悪さを増してきたと思っていた。しかしそれは、僕への攻撃の前の静寂に過ぎなかった。
 
 
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