ハンナの足跡

　神崎の一件をハンナ達に話してみると、三人共、大声で笑った。
「何それ、神崎って人、あんたのストーカー気取りじゃん。キモイよ。キモイ。」
　朱美は、あいかわらずの調子だったが、その一言は心地良く聞こえた。
「よっぽど羨ましいのね、ハンナみたいな綺麗な子と仲良いのが。だけど、そんなとこに頭使ってるなんて、暇なんじゃないの。平和な人だわ。うちの店に来たら、店の男、全員集めて、おどしちゃおうよ。」
　朋子はなんだか楽しそうだった。
　ハンナはその日、少し元気がないようだった。いつもと変わりなく、明るく笑っているが、何処か不安な表情を見せることがあった。僕は気になってハンナに声を掛けた。
「どうした、ハンナ。なんか心配事でもあんのか。なんかいつもより、元気ないんじゃないの。お兄ちゃんに話してみな。」
　するとハンナは、ちょっと涙目になった。
「やっぱり、お兄ちゃんね。よく分かるね。私のお母さんが具合悪いって、電話あったから、私、心配よ。とても心配なの。」