ハンナの足跡
 わんわん泣いている三人に向かって、僕はこう切り出した。
「ねえ、皆、泣くのは気が済んだ?女の子って感じやすいのかな。泣いても何も解決しないだろ。」
「ひっどーい、お兄様。朱美、体は感じ易いけど、泣くのは別に普通じゃん。」
 朱美の言葉で、ハンナも朋子も涙がふっとんだ。
「朱美、面白いね、最高ね、大好きよ、朱美、」
 ハンナは朱美に抱きついてキスしまくった。朱美はポカンとしたまま、ハンナにされるがままにしていた。
「ところでさ、僕の友達で、西島って奴が居るんだけど。皆で会ってみないか、今度。プロボクサーで、見た目もカッコいいけど、中身も良い奴なんだよ。どうかな。」
 三人は顔を見合わせた。朱美はカッコいいに反応した。
「朱美すごく会いたーい、抱かれたーい!」
 僕らは爆笑した。こいつなら、西島をやっつけられそうだと僕は思ったら、もっと可笑しくなった。
「西島は、ハンナに興味あるみたいだぞ。ハンナの話したら、食いついてきたんだから、あいつ。」
「私、ダメよ、誰ともお付き合いしないもの。相手の人、困らせたくない。私、ダメよ。」
 ハンナは照れ隠ししているようで、その言葉には真実味があった。
「ハンナ、俺の他に、もう一人、お兄ちゃんが増えると思えば、楽しいだろ。あいつはお兄ちゃんっていうより、弟かな。それならいいだろ、ハンナ。」
 僕がそう言うと、ハンナは「うん」と嬉しそうな顔をした。そのとき僕は、ハンナを僕みたいに一人ぼっちにさせたくないと思っていた。今になって考えると、本当にそう思える。
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