ハンナの足跡
 飲み会の当日、僕らは4人で、予約した店まで歩いていった。僕とハンナは並んで先頭を歩いた。後ろの二人、朱美と朋子は、いつものようにキャーキャー騒いでいた。無邪気で、こうしてみると可愛いもんだと思った。
「お兄ちゃん、私、本当にお兄ちゃんに会えて良かった。」
 ハンナは僕を見て微笑んだ。
「なんだよ、急に。なんかあったのか、また。」
「ううん、ないよ。そうして、心配してくれること、とても嬉しい。」
 ハンナは体調も良いらしく、その日は普段より生き生きして見えた。
 店に着くと、西島はまだ来ていないらしく、僕らは先に席に着き、適当なものを注文した。飲み物が届けられると、朱美が乾杯したがった。僕らはそれに乗った。
「今日はお兄様がご馳走してくださるし、イケメンの強そうな男にも会えるし、仕事終わった後だし、飲むぞっ!それでは皆、今日も一日オツカレサマ、かんぱーい!」
 僕らは盛大に乾杯した。ハンナは、酒が強いという前評判に気負いすることなく、豪快に一気飲みした。
「ハンナ、酒ほんとに強いんだな。お兄ちゃん負けました。」
「私、お酒は好きだし、沢山飲めるよ。お兄ちゃん、ダメなの。」
「いや、ダメってわけじゃないけど、ハンナには負けるなあ。」
「まだ一杯目だよ、お兄ちゃん男らしいから強いよ。」
「いやいや、それと酒はあんまり関係ないんじゃないの、ハンナ。」
「そんなことない、気持ちで何でも出来るようになる。」
「あんまり無理すんなよ。お前が潰れたら、介抱するのは間違いなく俺なんだから。」
「頼りにしてます、お兄ちゃん。」
 ハンナは僕の肩に寄りかかった。ドキッとしてしまったが、僕はその気持ちを無視して、素直にハンナが僕を頼ってくれることに喜びを感じることにした。
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