ハンナの足跡
 しばらくして、4人で盛り上がっているところへ、西島がやって来た。
「こんばんは、皆さん盛り上がってますね、はじめまして、西島です。」
 西島はいつもの人懐っこい笑顔を振り撒いて登場した。こいつは女から見たら文句無しにカッコ良く見えてしまうと僕は確信した。
「先輩、今日は本当にありがとうございます。さすが先輩、こんなに綺麗で可愛い女の子を集められるなんて、ほんとうれしいっす。」
「そうだよ、お前のために呼んだんだよ3人の美女を。でも、今日一日で全員食べないようにな。皆も気をつけるように。」
「やめてくださいよ、先輩、俺をまるで野獣みたいに。」
「だって野獣だろう、お前。」
 そんなふざけた遣り取りを僕と西島はしばらく楽しんだ。3人の様子を見渡すと、ハンナは天晴れな酒豪っぷりで、次々とビンを空にしていた。ペースが速過ぎるのではないかと、僕はハラハラした。朱美と朋子は西島を気にして、大人しくなっていた。
「あれ、朱美、朋子、なんだよ急に大人しくなっちゃって。」
「だってえ、ねえ、朋子さん、こんなにカッコいいとは思ってなかったじゃん。」
「うん。びっくりしちゃった。」
 朱美と朋子は二人で顔を見合わせた後、西島を見つめて、恍惚とした顔になった。僕と西島の会話は全く聞いてなかったんだなと思った。気分良く酔っているハンナは、西島に酒を勧めた。
「西島さん?はじめまして。私、ハンナ。ハンナと呼んで。私と一緒に飲もうよ、西島さん。お兄ちゃん、あんまり飲まないから、つまんなかったとこね。」
「君がハンナか。先輩には昔っから世話になっててさ…」
「私もお兄ちゃんの世話になってます。」
「そうなの。先輩ウラヤマシイなあ、こんな可愛い妹が出来たなんて。」
「そうか?世話の焼ける妹だよ。」
< 30 / 200 >

この作品をシェア

pagetop