ハンナの足跡

　ハンナも朱美も朋子も、明日からは仕事に入らなくてはならないので、時間も遅くなるとマネージャーが心配するだろうからと、とりあえず、彼女達を送って行くことになった。彼女達は、働いている店の近くに部屋を借りてもらい、そこで三人で暮らしている。
「へえ、三人で一緒に暮らしてるんだ。俺もそこに混ぜてもらいたいなあ。」
「キャー、朱美、大歓迎！」
　朱美は酔いが醒めたようだ。
「ダメ、コウスケは一緒に住んじゃダメ。」
「なんでよ、ハンナ。俺には冷たいんだから。」
「違うよ、西島さん。ハンナは西島さんの事考えて言ってるんだよ。もちろん朱美に毎晩襲われちゃって、試合どころじゃなくなっちゃうっていう理由じゃないよ。」
「あははは、朋子ちゃん、面白い事言う。」
「じゃなくて、あたし達の仕事は、キレイな格好してるだけで、毎日いろいろと大変なのよ。女同士じゃないと言えない事もあるし、女同士じゃないと落ち着けないときもあるの。西島さんが一緒に住んだら、幻滅して、女嫌いになっちゃうよ。生々しいんだから、あたし達の仕事は。」
「そっかあ、それは残念だな。先輩のアパートは、皆が住んでるとこと近いんですよね。」
「そうだよ、すごい近所。」
「いいなあ。俺も引っ越して来ようかな。」
「お前が良いならそうしたらいいんじゃない。ジムにもわりと近い方だし。」
「真面目に引っ越ししようかな。」
　そんな事を話しているうちに、彼女達の仕事場まで来てしまった。華やかなネオンが眩しい。そのうちの一つを指差して、朱美が叫んだ。
「ここが私達のお店。遊びに来てねえ。」
　店の名前は覚えていないけれど、なんだか高そうな雰囲気の店だった。