ハンナの足跡
「お兄ちゃんも知ってるね、朱美、男がいないとダメなの。」
「知ってるよ。男っていうより、セックスしないとダメなんだろ。」
「そう。セックスしないと不安になるって、朱美言ってた。」
「それで、薬を?」
「それだけが原因じゃないみたいだけど。セックスのせいで、朱美、今困ってるのと違うの。」
「何があったの?」
「朱美にはね、彼氏が居るの。朱美の仕事を知ってても、朱美の事が好きだからって言われて、朱美は付き合うことに決めた。」
「へえ、すごいね、朱美の彼氏。俺にはそんなこと出来ないな。」
 ハンナは少しムッとした顔をしたが、話を続けた。
「朱美の彼氏は、本当に朱美のことが好きみたいで、飲み会があった次の日に、朱美は結婚申し込まれた。」
「で?」
「その日から朱美、返事するのに困ってる。どう、答えたらいいか。」
「彼氏を待たせてるってこと。」
「そうよ。」
「朱美はどうしたいって?」
「朱美、結婚は出来ないって。でも、彼氏と別れたくないって。」
「彼氏は、結婚出来ないなら別れるって言うんだな?」
「そう、よく分かるね。びっくりね。」
「朱美のこと、一人占めしたいんだよ。彼氏は。」
「一人占め?」
「そう。つまり、僕だけの朱美になってくださいってことだな。」
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